設計技術で貢献する、障がい者の「社会参加と自立・自己実現」

2017/03/16

(取材協力)
「(株)かどや」 代表取締役 波多野 様 (左のかた)
「特非)日本就労支援センター ナチュラルサポート海老名」 理事長 渡部 様 (右のかた)

(製品設計メンバー)
・井村 (PL)
・飯田(アドバイザー)

・西原(機械エンジニア) ・吉岡(電気エンジニア) ・石黒(機械エンジニア) 

お二人は高校時代に剣道部で知り合い、かれこれ30年以上も同期の仲。

真ん中に映っているのが、横浜テクニカルセンター所属の井村さん(請負所属)が統括・設計した『シーラー(※)搬送機』。

※「シーラー」・・・熱を利用してポリ袋などの閉じ口を密着させて封じるもの

「シーラー」という聞きなれない名前の装置。一体どんな製品なのか聞いたところ、軽作業をとおして障がい者の就労や機能訓練(腕や脚など身体の機能)による社会復帰を支援する「日本就労支援施設」に納めてあるとのこと。
さっそく井村さん、飯田さんにお願いして、「㈱かどや 代表取締役 波多野 様」(以下 波多野様)と「日本就労支援施設 ナチュラルサポート海老名 理事長 渡部 様」(以下 渡部様)にお会いしてお話しを伺えることに!

「ナチュラルサポート海老名」


「ナチュラルサポート海老名」は 小田急 海老名駅 からタクシーで10分弱の場所にある

―このたびはお忙しい中お時間をいただき有難うございます!
今回の取材内容を社内外向けに広報したいと考えています。これまで、お客様への取材は、取引契約上できませんでした。じつは、この取材は当社初の試みとなります!

渡部様:そうでしたか!このような施設は、いかに現場を改善していけるかが鍵なんです。御社のような設計技術の会社に内情を知ってもらうことで、また新たなアイディアが生まれるかもしれません。たくさんの人に実情を知ってもらいたいと思っていますので、今回の取材を大変有難く感じています。今日は施設の隅々まで案内しますので、ぜひPRをお願いします!

波多野様:私が言うのも変な話ですが、この施設のラインは本当に素晴らしいですよ!一企業のライ ンより遥かに優れています!

―どのように優れているのか詳しく伺わせてください!

「就労支援施設」であるために


渡部様は「ナチュラルサポート海老名」の理事長として運営業務を担う傍ら、「効率化」と「品質管理」のバランス維持も大事な仕事の一つとして捉えている。その理由を聞かせてくれました!

(以下 渡部様のお話)
現在、当施設が手掛ける軽作業業務は、もともと一般の企業が手掛けていた業務です。
このような支援施設が請け負う業務にも、じつは請負元への納期が設定されているのです。ですから、当然スピードが求められます。さらに、それを受け取るエンドユーザーがいます。こちらで扱っている商品のエンドユーザーは主に病院や専門メーカーのような企業ですね。ですから『高品質』で商品を納めることも求められます。「“障がい者”が作ったから」などという言い訳は通用しないのです。そこで考えるべきは『効率化』。すべての工程を「自動化」すれば納期・品質ともにお客様が満足するものに仕上がります。しかしながら、私たちの本来の目的は障がい者の方々を支援し、自立させ社会復帰させること。頂いた仕事をきちんとこなし、且つ訓練を兼ねた職場を作らなければ「就労支援施設」としての役割を果たすことはできません。

すべて自動化するのでは意味がない


「体温計カバー」の裁断~箱詰めまでを、工程ごとに作業している様子

「効率化(スピード)」のためにすべてを自動化すれば、作業者の仕事は単純作業だけになってしまう。単純作業というのは、例えばボタンを押すだけであとは機械がすべてやってくれるような作業ですが、このような作業は機能訓練とは言えないんです。では、就労支援施設としてやるべきことは何か? そう、それが「自動化する工程」と「訓練作業の工程」を見極めた“ライン作り”。このラインバランスを工夫するのは大事な仕事の一つなのですが、とても難しいところでもあるんです。

作業収益は作業者の収入に


「医療用の試験紙」作りは、かなり高度な作業レベル

じつは、「内職作業」という仕事は世の中にたくさんあるんです。基本的にはその作業賃金は「1商品~銭」というレベル。一般的な内職作業では、自立生活を支援する工賃に達することはできません。障がい者がこういった就労支援施設で得られる工賃は『時給180円』程度です(神奈川県内の施設平均)。だからこそ、装置を導入することでライン効率を上げ、「就労支援訓練」の作業として“何が出来るか”、“どこまで出来るか”を考える。なるべく『機能訓練』となる高度な作業レベルを残し、それ以外の作業を自動化していくことが、訓練的にも賃金的にも一番望ましい形なのです。
おかげさまで、当支援センターは『平均時給420円』を維持しています。とはいえ、訓練ではなく雇用契約による利用形態だと最低賃金以上の時給が必要となるわけですから、まだまだ低いレベルですよね。

就労支援施設にとって、作業効率へのハードルは高い

実際、装置を必要としている(ラインを改善したい)就労支援施設はたくさんあります。国からの助成金制度が活用できることもありますが、理想の装置を発注すればコストオーバーになってしまう。
できるかぎり「作業レベル」を上げれば利用者の時給も上がりますから、「効率化」と「高品質」を維持していくことが施設側の腕の見せ所になってくるわけです。
しかしながら、多くの設計は、できあがる製品に焦点を合わせ検討・研究されがち。そこに関わる人のことに目を向けられることが少なく、私たちが求める、その簡単な仕組みを形にできる人は、逆にごく稀となっているのも現実かと感じております。私たちの現場は、技術というより創意工夫なのです。決して高度な仕組みを必要としているわけではないのです。

普段私たちが知ることのない業界事情を詳しくお話しくださった渡部様。次に、「就労支援施設のお仕事をなぜ当社が請け負うことになったのか」。こんどは「㈱かどや」の波多野様にお話を伺いました!

他社でも同じモノができると想像できればDNに依頼しない

(以下 波多野様のお話)
じつは、デザインネットワーク様と当社(㈱かどや)は10年以上前からのお付き合いになります。今回も、「ナチュラルサポート海老名様」のお仕事を一緒に取り組むことにしたのは、デザインネットワーク様とお仕事をするといろんなアイディアを発想・提案してくれて、おもしろいからです。あたりまえの話ではありますが、発想・提案は何でもいいというわけじゃない。とくに今回のお仕事は安全面などに気を配る必要がありました。
デザインネットワーク様に対して私が感覚的に惹かれているところは、普段の会話の中で「フワッとしているけど大切な情報」を上手く拾ってくれるところですね。そして設計した製品について配慮がきめ細かい。安全面を配慮する仕事はさすが設計会社です!
たとえば、新たなお仕事を受注したとして、どの会社に依頼をかけても必ず同じ形のモノができあがってくると想像できれば、デザインネットワーク様にはお願いしないですね。
ゼロからのモノづくりに一緒に真剣に悩んでくれる企業は、そうそうありませんから。

「シーラー搬送機」設計解説


井村さんが手掛けた「シーラー搬送機」は、乳がん検診の触診用に使用する専用手袋が入ったポリ袋を密封するために設計された


・体重をかけたり、ぶつかってしまったり、イレギュラーな動きも想定した設計。
・障がい者以外のスタッフが作業する場合にも、作業スピードを落とすことない生産性で設計。

まとめ


すべての仕事に通ずる「ホスピタリティーマインド」(「ナチュラルサポート海老名」にて)

「シーラー搬送機」は、渡部様のアイディアを、30年以上も同期の波多野様が技術的にイメージ。そして、デザインネットワークはより現実的に設計図に落とし込む。当社以外にも設計会社と取引がある中で、お二人の信頼関係の中にデザインネットワークを選んで頂けるのは大変嬉しいことですよね!
当社の技術が「就労支援」の現場にまで貢献している事実にはとても驚きました。
幅広い経験から培った技術で高度なモノづくりをするだけでなく、業界やそこに関わる人たちに目を向け、「一番必要なコトは何か」を考え抜くことがエンジニアの仕事なのだと、改めて知ることが出来ました。
帰り際、渡部様がおっしゃった「誰もが障がい者になる可能性がある。何かの要因で障がいが表面化した場合には、私たちはその人に適したサポート支援を考えるだけ」という言葉が印象的です。精度の高い仕事をするには「お客様を一番に考える」こと。今回の取材から学ばせていただいたことです。
これからも引き続き、様々な角度からみたデザインネットワーク、そしてエンジニアの姿を発信していきます!

最後に、このような機会を作っていただいた、渡部様、波多野様をはじめ、井村さん、飯田さんには大変感謝しております。採用広報へのご理解・ご協力有難うございました!